00053-040516 行列のできる法律相談所はスバラシイ
今日の「行列のできる法律相談所」はいつもと違った。問題がすべて、弁護士4人の回答が同じになるような基本的な法律問題だったのだ。条文通りだったり、解釈の余地がなかったりする問題。普段この番組で扱われる法律問題はほとんどの場合、4人の弁護士の見解が分かれる。そこが他の法律番組と全く異なる点だ。
いつもshioが言っていることだけど、この番組は法律の真の姿をよく表していると思います。本来法律問題には「唯一の解」、「絶対の解」、「正解」というものは存在しません。人の数だけ解がある。そういう性質の問題です。当然、裁判官によって同じ法律問題に対する解が異なる。だから国民は、ひとつの法律問題に対して3回、裁判を受けることができる制度になっているのです。したがって、この番組で4人の弁護士が、それぞれ異なる論拠に基づいて各々異なる結論を述べるのは至極自然なことなのです。法律問題の真の姿にとても近いのです。
けれども、この「答えが複数ある」という状況は、日本の初等中等教育の中ではほぼあり得ないことです。学校で行う試験には、必ず「正解」が1つある。それ以外は「不正解」、「まちがい」、「誤り」。この「正解はひとつ」という問題に慣らされた人は、「答えが複数ある」状況に異様さを感じる。不安になる。無意識に「唯一の正解」を求める。だから他の法律番組は「正解」はひとつ。しかしそれは法律の虚偽の姿なのです。
「行列のできる法律相談所」は、ものすごく面白い番組です。島田紳介さんをはじめとした出演者すべてのキャラクターが生かされている。トークの内容も軽妙。けれどもこの番組を本質的に面白くしているのは、法律の真の姿をスマートに体現している、という点にあるのです。他の法律番組が単なる知識の伝達にすぎないのに対し、市民にわかりやすい形で法律の心まで伝えうるチカラを持ったこの番組。shioは大好きです。
その番組が今日はいつもと違う企画。弁護士全員が同じ見解を出すような問題ばかり10問ほど。とてもよい企画でした。まずとても基本的ないわゆる「法律の常識」を情報として提供したという点で、他の法律番組が毎回やっていることをこの番組でもできるのだということを示しました。しかし今回の企画の意味は別のところにあります。それは、この番組に登場している弁護士たちが同じ結論に達する法律問題もたくさんあるのだ、というデモンストレーションになったことです。これは視聴者に対して、極めて重要なアピールになったはずです。普段、毎回毎回異なる見解ばかり出す弁護士軍団がの答えが一致するような問題もあるのだということが視聴者にクリアに伝わっただけでなく、他の法律番組が毎回提供しているような法律情報はこの番組も提供できるということが明らかにされ、さらに、この番組が毎回扱っているトピックは、「意見が一致する問題」=「当たり前の問題」ではなく、専門家でさえ人によって見解が分かれる、より高度な問題なのだということが明解に伝わったからです。
この番組のプロデューサーの方、制作に関わっているすべての方々、スバラシイと思います。
「見解が複数あって、結局結論がどっちなのかわからなくて困る。」などという視聴者の意見に惑わされることなく、ぜひこの番組を続けていってください。楽しみにしております。
さて、そのあと原稿の校正などの仕事をしながら情熱大陸を見ました。そこで、上述の内容を端的に表すことばに出会いましたので記しておきます。
ゴルフコーチ江連 忠氏のことば:「人を生かす。クラブを生かす。」
まさに、本質が見えている人のことばです。
これを法学教育に置き換えると、「人を生かす。条文を生かす。」ということになります。すばらしいことばです。人の価値観は全員異なる。それぞれの人が自分の価値観を磨き、その価値観に基づいて条文を解釈する。これこそ法学教育の目的であり、法律学の使命なのだとshioは考えます。
法律って面白い!!
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ご覧いただきどうもありがとうございました。